公務員の受験資格
公務員試験は誰でも受験できるわけではありません。一定の受験資格を満たす者のみ受験可能です。受験資格には公務員共通のものと、その試験種特有のものがあります。
さらに、試験種ごとに異なる受験資格である「年齢上限」一つ取っても、試験によって21歳から59歳までと幅があります。では順を追って公務員の受験資格について見ていくことにしましょう。
受験資格の種類
【公務員試験5つの受験資格】- 共通要件(公務員共通の要件)
- 年齢要件(試験種ごとの要件)
- 学歴要件(総合職などの要件)
- 資格要件(試験区分別の要件)
- 身体要件(公安系特有の要件)
公務員の受験資格を全て挙げると、この5種類の要件に分類されます。もちろん受験する試験種により要件の数は異なります。
では、各々の要件を順番に説明していきます。
1.共通要件
公務員の「受験案内」を眺めていると、このような文言が受験資格の欄に記載されているのをよく見かけると思います。
1.成年被後見人,被保佐人(準禁治産者を含む)※法改正により削除
2.禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者又はその刑の執行猶予の期間中の者その他その執行を受けることがなくなるまでの者
3.〇〇として懲戒免職の処分を受け,当該処分の日から2年を経過しない者
4.日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し、又はこれに加入した者
国家公務員を受験する場合でも、地方公務員を受験する場合でも、上記の文言が募集要項に必ず書かれています。国家公務員の場合は〇〇の部分が「国家公務員の一般職として」となっていることが多く、県などの場合は「〇〇県の職員として」とされています。
これが、公務員共通の「欠格条項」です。つまり、上記のどれか1つに該当すると、原則として公務員になることができません。この公務員の欠格条項は、国家公務員の場合は「国家公務員法第38条」に、地方公務員の場合は「地方公務員法第16条」に定められています。
国籍要件を課す採用先もある
国家公務員でも地方公務員でも、日本国籍がなくても公務員になれる場合があります。しかし一部の公権力を行使する仕事には日本国籍を有する者しか従事することができません。この要件は採用先により制限を受ける、いわば「職種ごとの要件」です。
国籍要件は、厳密にいえばもう少し複雑です。たとえば人事院の実施する国家公務員の総合職や一般職の試験では、日本国籍を有する者でも外国籍を有する者は外務公務員にはなることができないと規定されています。また、国税専門官などの国家公務員専門職は日本国籍を有することが必須とされています。
地方公務員の場合は、公務員の基本原則「公権力の行使または公の意思の形成に参画する公務員については、日本国籍を必要とする」に基づき、(1) 公権力の行使にあたる業務、(2) 公の意思の形成に参画する職には就くことができません。したがって、警察官・消防官になれない他、税の滞納処分や生活保護の決定といった仕事に携わることができません。
2.年齢要件
先ほど挙げた欠格条項に該当する方は少ないと思いますが、この年齢要件については気になるところです。
実際、何歳までなら公務員になることができるのでしょうか?
結論を先に申し上げると、年齢要件は受験する試験によって大幅に異なります。冒頭で述べたように21歳までしか受けられない試験もあれば、59歳まで受けられる試験もあります。
受験可能な年齢を大まかに言えば、下表のように、高卒程度の試験は20代の前半まで、大卒程度の試験は30代前半まで、社会人経験者採用は上限なしとなります。
高卒程度 |
大卒程度 |
社会人 |
---|---|---|
20代前半 | 30代前半 | 上限なし |
*ただし定年を超える年齢の方は受験できません
上記のように、年齢上限は一般的に「高卒20代」「大卒30代」「社会人無制限」となりますが、特に大卒程度の試験は種類や自治体により受験可能な年齢上限が大きく異なります。
国家公務員の大卒程度試験は、概ね30歳前後が上限ですが、27歳が上限の試験や40歳まで受験可能な区分もあります。
地方公務員になると、25歳程度が上限の自治体から35歳程度が上限の自治体まで多種多様です。しかも、同じ大卒程度の試験でも、受験する区分によって年齢上限がずいぶん異なります。
たとえば、特別区Ⅰ類という大卒程度の試験では、「事務」や「技術」区分の受験可能年齢が平成28年度以降32歳未満に引き上げられました。しかし、「福祉」区分では上限が2歳低く、反対に「心理」や「保健師」区分では40歳未満まで受験が可能です。
大卒程度行政区分の受験可能な年齢上限一覧を、「公務員試験の年齢上限」というページにまとめていますので、ぜひ一度ご覧になってください。また、地方公務員の社会人経験者採用は上限年齢を厳しく設定している自治体もありますのでご注意ください。
3.学歴要件
公務員は学歴別に試験を実施するのが一般的です。
ほとんどの公務員試験は「高校卒業程度」「短大卒業程度」「大学卒業程度」といった学歴別区分に分けて実施されます。しかし、これは試験問題のレベルを表すだけで、学歴を要件として課しているわけではありません。
大卒レベルの試験でも、大部分の試験は「大学卒業程度」であって「大学卒業」を要件とはしていません。したがって、その他の受験資格を満たしていれば高卒者の方が大卒程度の試験を受験しても問題ありません。
しかし、公安系など一部の試験では「大卒者」を対象とした試験もありますのでご注意ください。ただし、学歴要件を課す試験は公務員試験全体のごく一部であり、大部分の公務員試験は学歴不問です。
院卒者しか受けられない試験もある
また、国家公務員の総合職(裁判所や国会職員も含む)には、「院卒者」を対象とした試験区分もあります。これらの試験は、大学院を修了した人もしくは修了予定者しか受験することができません。
なお、国家総合職は「院卒者」区分で受験したほうが「大卒程度」区分で受験するより倍率が低いという特徴があります。大学院の修士課程を修了している方は院卒者区分で受験したほうがお得なので、院卒者区分で受験しない手はないでしょう。ただし同じ総合職院卒者区分でも「家裁調査官補」のような例外もありますのでご注意ください。
地方公務員でも、東京都Ⅰ類Aのように大学院卒レベルの問題を出題する試験区分がいくつかあります。ただしこちらも国家公務員と同様に実施している自治体は少数派です。
4.資格要件
公務員試験を受験するのに「資格」が必要になることもあります。
教員採用試験であれば、教員免許が必要ですが、公務員試験の場合もそれと同様に「国家資格」などが必要な試験区分もあります。
たとえば、東京都や特別区を「福祉」区分で受験する場合、社会福祉士などの資格が必要となります。しかし、その他の自治体では社会福祉主事の任用資格で足ります。主事の任用資格は大学で必要単位を取得していれば要件を満たします。
このように、同じ職種でも受験先により資格要件が異なることがあります。しかし、資格要件が課されるのは基本的に専門職の区分のみです。いわゆる「行政事務」区分では特殊な受験先以外は特に資格は必要ありません。
5.身体要件
警察官や消防官などの公安系職種では「体力」や「体格」を要件として課すことがあります。
たとえば警視庁警察官の試験では、身体要件として「身長・体重」や「視力」が要件として課されています。
身長基準は、男子でおおむね160cm以上、女子でおおむね154cm以上です。視力基準は、裸眼視力が両眼とも0.6以上、又は矯正視力が両眼とも1.0以上が要件とされています。また、警察官の試験では、この他に「体力検査」が実施されます。体力検査の内容は、腕立て伏せ、上体起こし、反復横跳びなどで、これらの検査で一定水準に達することが要求されます。
国家公務員でも、公安系に属する「法務教官」「航空管制官」「皇宮護衛官」などは視力等の身体要件が課されています。
他方、反対に身体に障害のある方に対しては、大部分の自治体が特別に「身体障がい者」枠を設けて別枠で試験を実施しています。
【番外編】勤務年数要件
最近では、高卒程度や大卒程度とは別に社会人経験者枠を設けて採用試験を実施する自治体が増えています。地方公務員だけでなく、国家公務員でも経験者採用を実施しています。
この社会人経験者枠で受験する場合、一般的に民間企業等での勤務年数が受験要件として課されます。短いものでは4年程度ですが、係長や課長級となると10年以上の勤務年数を要求するものもあります。
社会人経験者採用の受験資格についての詳細は、下記の「試験種別の受験資格」の社会人経験者の項目から該当ページをご覧ください。
試験種別の受験資格
試験種ごとの「年齢要件」や「学歴要件」などを詳しくお知りになりたい方は、以下の試験種別ページをご覧ください。
国家公務員
国家総合職の受験資格をお知りになりたい方は国家総合職のページをご覧ください。
国家総合職の法務区分や教養区分の受験資格をお知りになりたい方は国家総合職(法務・教養)のページをご覧ください。
国家一般職の受験資格をお知りになりたい方は国家一般職のページをご覧ください。
国税専門官の受験資格をお知りになりたい方は国税専門官のページをご覧ください。
財務専門官の受験資格をお知りになりたい方は財務専門官のページをご覧ください。
法務省専門職員の受験資格をお知りになりたい方は法務省専門職員のページをご覧ください。
皇宮護衛官の受験資格をお知りになりたい方は皇宮護衛官のページをご覧ください。
刑務官の受験資格をお知りになりたい方は刑務官のページをご覧ください。
国家公務員高卒者試験の受験資格をお知りになりたい方は高卒程度国家公務員のページをご覧ください。
地方公務員
東京都1類の受験資格をお知りになりたい方は東京都Ⅰ類のページをご覧ください。
特別区1類の受験資格をお知りになりたい方は特別区Ⅰ類のページをご覧ください。
地方上級(行政職)の受験資格をお知りになりたい方は地方上級(行政職)のページをご覧ください。
地方上級(心理職)の受験資格をお知りになりたい方は地方上級(心理職)のページをご覧ください。
地方上級(福祉職)の受験資格をお知りになりたい方は地方上級(福祉職)のページをご覧ください。
地方上級(技術職)の受験資格をお知りになりたい方は地方上級(技術職)のページをご覧ください。
地方初級(高卒程度)の受験資格をお知りになりたい方は地方初級(高卒程度)のページをご覧ください。
その他、自治体ごとの今年度の受験資格を詳しくお知りになりたい方は全国自治体別ガイドより各自治体別ページをご覧ください。
公安系その他
警視庁警察官の受験資格をお知りになりたい方は警視庁警察官のページをご覧ください。
東京消防庁消防官の受験資格をお知りになりたい方は東京消防庁消防官のページをご覧ください。
国立大学法人等職員の受験資格をお知りになりたい方は国立大学法人等職員のページをご覧ください。
文部科学省文教団体職員の受験資格をお知りになりたい方は文部科学省文教団体職員のページをご覧ください。
障害者職業カウンセラーの受験資格をお知りになりたい方は高齢障害雇用支援機構のページをご覧ください。
社会人経験者
国家公務員経験者採用の受験資格をお知りになりたい方は国家公務員経験者採用のページをご覧ください。
地方公務員経験者採用の受験資格をお知りになりたい方は社会人経験者採用(地方)のページをご覧ください。
東京都キャリア活用採用の受験資格をお知りになりたい方は東京都キャリア活用採用のページをご覧ください。
特別区経験者採用の受験資格をお知りになりたい方は特別区経験者採用のページをご覧ください。